呼びますか
— やゆめめのこわいコーナー / 揶揄野メメ
これは、知り合いの「みさき」さん(仮名)から送られてきた話。本人の許可をもらって、ほぼそのまま載せます。やゆめめは、転載しただけだからね。……だから、もし何か起きても、わたしのせいじゃないよ。( ´ ▽ ` )
夜中に、留守番電話が一件入っていた。
着信は午前3時14分。わたしはとっくに寝ていて、スマホはマナーモードで枕元にあった。鳴った記憶はない。でも履歴には、確かに一件残っていた。
番号は知らないものだった。市外局番から始まる、固定電話みたいな番号。でも桁がひとつ多かった。十一桁のはずなのに、十二桁あった。
「番号、打ち間違いかな」と思って、わたしはあまり気にしなかった。間違い電話の留守電なんて、よくあることだから。
翌朝、通勤の電車で再生してみた。
最初の十秒くらいは、無音だった。いや、正確には、無音じゃない。風の音みたいな、布が擦れるみたいな音が、ずっと続いていた。誰かが、受話器を口元にあてたまま、黙っているような音。
……(呼吸のような音)……
……いま、どこ……?
……ちゃんと、かぎ、しめた……?
女の人の声だった。低くて、少しかすれていて、すごく疲れているみたいな声。知らない声。少なくとも、わたしはそう思った。
いたずらか、間違いか。そう思って消そうとした。指が、画面の「削除」に触れる直前。
音声が、まだ続いていた。
……あけて、あげるから……
……そこ、さむいでしょう……
……みさき……
最後に、名前を呼ばれた。
わたしの名前を。
知らない番号の、知らない女の人が、わたしの名前を、知っていた。──ううん、違う。そこじゃない。怖かったのは、そこじゃないの。
本当に怖かったこと
その「みさき」って呼ぶ声が。
わたしの声だった。
録音された自分の声って、自分ではうまく聞き取れないものだって言うよね。でも、家族にだけは、すぐ分かるって。お母さんに、その留守電を聞いてもらった。最後の三秒だけ。名前を呼ぶところだけ。
お母さんは、しばらく黙ってから、こう言った。
「これ、あんたの声だけど……あんた、いまここにいるのに、なんで“あけてあげる”の? 誰を、どこに入れてあげるの?」
その夜から、みさきさんは玄関の鍵を、内側からもうひとつ増やしたらしい。
でも、関係ないと思う。だって、声は言っていた。「あけてあげる」って。──鍵を増やしても、内側から開けられたら、意味がないよね。内側にいるのは、誰だと思う?
……というところで、みさきさんからの話は終わっています。
やゆめめからのお願いはひとつだけ。もしこれを夜中に読んでいるなら、いま、玄関の鍵、ちゃんと閉まってるか確認してみて。閉まってたら、それでいい。
もし、閉まってなかったら──誰が開けたんだろうね。
― 了 ― FICTION / YAYUMEME HORROR CORNER