
証拠 01 / 覚えのない名刺
名刺管理アプリの一覧に、交換した記録のない一枚が混ざります。登録日時は深夜。交換場所の欄は空欄です。報告されている会社名を並べます。
- 株式会社うしろ営業所
- 終業後管理株式会社
- 有限会社おもかげ流通
- 合同会社となりの課
裏面には、URLが一行だけ印刷されています。
CASE / MEISHA
名刺管理アプリに、交換した覚えのない名刺が紛れ込む現象の記録です。名刺、会社サイト、業務チャット、契約書の順に置きます。

名刺管理アプリの一覧に、交換した記録のない一枚が混ざります。登録日時は深夜。交換場所の欄は空欄です。報告されている会社名を並べます。
裏面には、URLが一行だけ印刷されています。
URLを開くと、普通のコーポレートサイトが表示されます。沿革、代表挨拶、採用情報、問い合わせフォーム。全部あります。社員紹介のページだけ、様子が違います。全員が正面を向いて、少しだけ上から撮られています。
本日も無事に終業しました。
本日も無事に終業しました。
本日も無事に終業しました。
毎日この一行だけが投稿されています。日付は、明日の分まであります。
数日後、業務チャットに、作った覚えのないルームが増えます。ルーム名は「【定例】進行確認」。参加者は自分と、名刺の会社の担当者たちです。
@あなた 前回のお打ち合わせの件、ご確認をお願いします。
@あなた 添付を拝見しました。この内容で進めます。
「確認します」と返信した方の報告が、いくつか届いています。返信した日の夜から、深夜にだけ進むプロジェクトに名前が入るそうです。朝になると、自分の作業ログだけが残っています。作業した記憶は、ありません。
共有ドライブには、署名済みのPDFが増えていきます。自分の署名は、いつも済んでいます。署名日は、いつも未来の日付です。
契約書の担当者欄の氏名を検索すると、数年前の訃報が出ます。全員です。この現象を、冥婚にならって「冥社」と呼ぶ人たちがいます。呼び名が広まってから、報告は増えています。
最後にひとつ。名刺管理アプリで、自分の名刺を開いてみてください。確認するのは、所属の欄です。